脊椎分離症、または''脊椎すべり症''って聞いたことはありますか?
ほとんどの場合が腰(第五腰椎)に起こるのですが、何かしらの原因で脊椎の椎弓部が骨折、または破壊された状態を脊椎分離症といいます。
このような現象が起こると、腰痛は構造上、前に弧を描いているので前方向へ滑走する力が加わり、脊椎分離症を起こした椎骨は前方へすべることがあります。
それを脊椎すべり症といいます。
脊椎分離症の約30%に''脊椎すべり症''が生じていると考えられています。
また脊椎分離症が見られないにもかかわらず、脊椎がすべった状態にある場合を偽性すべり症といいます。
発症は、10〜15歳の成長期でスポーツ選手および愛好家に頻度が高く、その報告例でも20%以上です。
骨の発達が不十分な時期の腰部への繰り返す負担による疲労骨折と言われています。
しかし一方、疫学調査によるとイヌイットの40%以上に脊椎分離症がみられ、遺伝的要因もあると考えられ、明確な原因は不明です。
腰痛で病院へ行くと、X線撮影をして、こんなことを言われた方が多いのではないでしょうか?
「腰痛の原因は、この脊椎分離症です。」
「背骨がすべっているから腰痛は避けられないですね。」
X線画像を目の前に、そんな説明を受けると納得してしまいますが・・・
ご安心ください。
実は腰痛と脊椎異常はまったく関係ありません!!
腰痛と脊椎異常の関係性に関して、いくつか論文が出ているのですが、1992年にBigos
SJによって行われたこんな研究があります。
急性腰痛と慢性腰痛、そしてまったく症状のない健常者とをそれぞれ約200名集めて、X線撮影を行い、違いを調査してみました。
その結果、腰痛の有無に関係なく、ほぼ同じ割合で脊椎異常が見つかったのです。
脊椎分離症やすべり症は、症状のまったくない健常者でも普通に持っている個性の一つと言うわけです。
お医者さんに分離症やすべり症だから腰痛だと言われた方は、そう結論付けて諦めないで下さいね。
上記の研究と類似した研究をもう一つ、ご紹介しましょう。
1957年に、Fullenlove TM & Williams AJ によってRadiologyに発表された研究です。
この研究も上記の研究同様の結果が出ています。
腰痛の有無に関わらず、構造的異常は健常者にも存在することが分かりました。
腰痛の有無に関わらず、構造的異常は同じように存在します。一つの個性に過ぎないと言うことです。
レントゲンなどで、脊椎分離症や''すべり症''があると分かると、スポーツは避けた方がいいと考えてしまいますよね。
しかし、脊椎分離症・すべり症で、選手にスポーツを止めるように勧める科学的根拠はありません。
逆にこんな研究結果が出ています。
この研究は、ドイツで行なわれた脊椎分離症・すべり症の青少年スポーツ選手を対象に、5年間の経過観察を行なったもので、それによると、連日の集中的なトレーニングを行なったにも関わらず、症状はまったく現れることはなかったそうです。
また、この期間中に、すべりの増加が約40%の症例に認められたが、その程度は軽度だったそうです。
脊椎分離症・すべり症で、スポーツをあきらめようとしているしている方がいましたら、ぜひ上の研究をご参考にされて下さい。
アスリートの腰痛にどの程度、脊椎分離症が関係しているかを調査した研究がありますので、ご紹介しましょう。
一つは、イタリアの研究で若いアスリート4243名を対象に、もう一つはスペインの研究で3152名を対象にして行われました。
その結果、イタリアの研究では13.5%、スペインの研究では8.02%しか、脊椎分離症・すべり症と関連していないと結論付けられました。
これは、一般の腰痛患者における脊椎分離症の割合と変わりません。ようするに、スポーツによって脊椎分離症が起こる訳ではないということです。
また、画像検査で確認できる異常が腰痛の原因とは限りません。
ぜひ上の研究をご参考にされて下さい。
お困りの方は、ご相談ください。